0点から96点(3)

2学期の中間テストを一人一人教卓のところまで呼んで返却。

1学期よりも上がってた子には、それが10点でも「よっしゃ!点数は低いけど自己最高記録達成やな」などと語りかけながら返却します。

1学期よりも下がってしまってた子には「こういうこともある。人生、こんなもんや。大切なのは、下がったときにどうするかや」と、エネルギー注入。

そして、Tの番。

名前を呼ぶと「俺、どうせ0点やろ。勉強なんかしてへんし」と言いながらやってきました。

「当たり前じゃ。勉強してへんモンが点を取れるはずあらへん。せやけど、点、取りたいやろ?」

「別に・・・」

「誰にでも100点を取れる方法があるんやけど、教えたろか?」

「えっ?」

「あるんやなぁ、そういう方法が」

「ホンマ?」

食いついてきました。

誰だって、テストではええ点数を取りたいもん。

「ホンマや。〝聞く・書く・考える〝の3つを授業中に実践すること。考えるってことは、分からんことが分かるってことやから、質問せなアカンはな。つまり、授業の終わりには必ず質問に来いってこと。それと、テストまでに試験範囲を30回読む!それさへしてれば、100点間違いなしや」

それからTは、それを実践したんです。

授業中、それまで頭を使うこともなかっただろうから、真剣に話を聞くのも大変だったろうと思います。

何度も何度も、カクンと首が折れます。

でも、その度に自分のほっぺをパチンと叩いて眠気を追い払っていました。

さあ、期末テストも終わり採点です。

その頃の学年は7クラスあり、Tは1組だったのですが、一番最後に採点しました。

○○○○○○・・・ と、○が続きます。

「あっ」いくつか❌がありました。

その度に、私の寿命が縮む思いでした。

結果、96点!

それまで0点か、一桁の点数しかなかったTが96点をとりました。

返却のとき、「すまんな、私が教えたことをちゃんとやったのに、100点じゃなかった」と私は頭をさげました。

でも、Tは、「先生、これで十分です。俺こそありがとう」と言ってくれました。

私たち二人の会話を聞いていたクラスの子たちは、Tに盛大な拍手を送ってくれました。

ちかみに、そのときのそのクラスの平均点は86点。

学年の平均点は、70点に足りないぐらいでした。

そのクラスの子たち全員が、Tの頑張りに影響されたようです。

子たちの底力に感激でした。